なまはげ

提言・意見・寄稿

理事長の佐藤が秋田発の「全国低カリウム野菜研究会」を支援

先般9月21日、同研究会主催で、北海道文教大学を会場として「第5回低カリウム野菜フォーラム in 北海道」が開催され盛況のうちに終了しました。理事長の佐藤は本研究会を支援しておりますので、ここに本研究会の活動趣旨などを紹介してもらいます。

まず、「低カリウム野菜」というのは、カリウム含有量の低い野菜のことです。カリウムは健康な人にとっては必須のミネラルですが、腎臓病の方にとってはカリウムの排泄機能が低下しているために、カリウムの摂取量が制限されていて、過剰摂取は「頓死」を招きかねないのです。現在は野菜をゆでたりしてカリウム量を減少させていますが、他のミネラル分やビタミンなど有用な成分も流れてしまいます。

そこで、低カリウム野菜ができれば、生野菜も食べることができます(制限はあるものの)。
この野菜の栽培法を研究開発した秋田県立大学の小川教授は、ご自身が腎臓病患者さんだったので、生野菜のシャキシャキ感や生野菜の効用を知っているために、生野菜を食べたい、とのことから、ご自身の研究を役立てたとのことです。栽培方法は至ってシンプルで、水耕栽培での野菜育成過程で、ある段階から収穫までカリウムを肥料として供給するのを止めます。植物の生育には、窒素、リン酸、カリの三大要素が必須ですから、カリウムを止めて果たして普通の栽培方法のような大きさや葉色が維持されるのか、と考えたのですが、技術的工夫によってこの問題を解決することができたとのことです。

全国で腎臓病患者さんは約1300万人、透析病患者さんは32~33万人といわれております。この低カリウム野菜の普及をすることは、これらの患者さんやご家族にとって朗報と思われます。

佐藤が秋田県立大学の地域連携・研究開発センターで奉職していた時に、次のような電話を受けました。50歳近い女性の方です。「私は透析病患者になりました。生野菜を食べることができません。通院しているクリニックの先生は腎臓病についてのご本も書かれているご高名な方ですが、低カリウム野菜を知りません。なぜ大学はこの野菜の普及をしてくれないのですか」。佐藤は、これをきいてハッとしたといいます。その後2、3の人から同じような話をききました。

そこで、佐藤は小川先生や大学の関係者の方々とも相談し、関連の方々のご協力やご指導を受けて、2016年に「全国低カリウム野菜研究会」を立ち上げたのです。研究会の設立趣意は次のようなものです。(引用資料:http://teikariyasai.jp/)

高齢化や食生活の変化などを背景にして慢性腎臓病(CKD)患者が増加しつつある現在、わが国のCKD患者数は1300万人を数え、腎透析患者数は31万人に上ると言われております。これら腎臓病患者の多くは、カリウム摂取量が制限され、カリウム含量の多い生野菜の摂取も制限される場合があり、そのため生野菜摂取によって期待される他の栄養素の効果や食の楽しみが奪われるといった弊害が指摘されております。
最近、秋田県立大学で研究開発された「低カリウム野菜」は、通常野菜の約5分の1までカリウム含量が少ないことから、腎臓病患者の方々の健康増進や生活の質(QOL)向上、カリウム摂取量を正しく管理する等の医療上の観点から、多くの関心が寄せられています。一方、生産者や流通関係者および利用者からは、栽培・入手方法や正確なカリウム量の把握等の課題が指摘され、正しい認識と迅速で広範な情報提供が急務となっております。
本会は、このような現状を背景に「低カリウム野菜」に関して、腎臓病患者やそのご家族、これを支援する方々に資することを目的として活動することといたしました。「低カリウム野菜」の栽培生産や成分定量、医学的あるいはQOL効果、流通・販売や調理・提供の研究や調査を行い、その情報を関係者で広く共有し、「低カリウム野菜」の利活用を図ることを目的としております。
(注:数字は当時のもの)

佐藤は幹事として支援することになり、今日に至っております。シンポジウムやフォーラムは第1回目が低カリウム野菜発祥の地ともいうべき秋田、2回目が仙台、3、4回目が東京、そして今回が5回目で北海道となりました。ここでは、患者・医療・研究・栽培・マーケティング、様々な視点から低カリウム野菜について考え、情報交換を行い、得た知見を広く周知することを目的にしています。

ちなみに先般の第5回フォーラムのプログラムは次のようになっております。

第1部 「全国低カリウム野菜研究会」総会
13:00~13:10 総会

第2部 フォーラム
13:10~13:15 開会挨拶
13:15~15:20

基調講演: 「慢性腎臓病(CKD)とカリウム摂取について」(30分)
前野七門先生(北海道透析療法学会会長、仁楡会病院副院長)

講演

  1. 血液透析患者に対する低カリウム野菜の有用性について
    ~アンケート調査と臨床試験の結果~から」(30分)
    内田俊也氏(帝京平成大学国際交流センター長・教授/帝京大学医学部客員教授)
  2. 「低カリウムレタス等の開発」(20分)
    小川敦史氏(秋田県立大学教授)
  3. 「透析患者の食べられる幸せのために」(20分)
    佐々木優美氏(東桑会札幌北クリニック管理栄養士)
  4. 患者からみた低カリウム野菜」(10分)
    馬場亨氏(全国腎臓病協議会会長)
  5. 「北海道での低カリウム野菜栽培の取り組みと販売」(15分)
    吉田淳氏(㈱リーダーズバンク代表取締役社長)

15:35~16:05 パネルディスカッション

「低カリウム野菜の普及のために」
16:05~16:10 閉会挨拶

第3部 情報交換会
16:30~18:00 情報交換会 (会場:恵庭ステーションホテル)

<参考文献>
腎臓病透析患者にやさしい低カリウム野菜の栽培研究と商品化戦略、佐藤幸徳ら/秋田県立大学ウェブジャーナル A / 2015, vol. 3, 15-24

以上