この度、秋田県湯沢市の田中克己氏(労務会計事務所代表)からご寄稿頂きました。氏は本業の傍ら、「こまちイブニングサロン」という「場」を主宰し、異業種間、世代間、広域にわたる情報交換を通して、地元企業の活性化にご尽力しておられます。「こまちイブニングサロン」の機能には、このサロンを通して「課題を共有し、それを克服する具体的方策(ヒント)を得る」こともあり、今後機会がれば、事例を紹介していただきたいと考えております。このサロンも本年で10周年を迎えるとのこと、読者の方のご参考になるものと確信しております。
グローカル政経総研 佐藤幸徳
田中克己氏のプロフィール
生年 1952年
出身地 秋田県湯沢市
職業 田中労務会計事務所 代表
資格 税理士、社会保険労務士、CFP認定者
略歴 1980年12月 税理士試験合格
1981年 4月 田中税理士事務所開業
1989年10月 社会保険労務士試験合格
1989年12月 田中労務会計事務所に改称
2006年10月 CFP試験合格
1995年6月より2005年6月まで東北税理士会湯沢支部長歴任
2005年より1年間 東北税理士会秋田県連副会長歴任
2004年5月より現在まで秋田県社会保険労務士会監事
その他現在 湯沢市調停委員及び司法委員
本文
東京一極集中! 地方はどうなる!
昔から人々が東京へ働きに出ていく光景は無数にあった。集団就職や進学又は出稼ぎ等、し かしこれらは昭和の話で、日本の人口が爆発的に増加し家庭や地域に子供たちがあふれていたし高度成長期により日本経済が上昇志向になって明日への希望の光が満ちていたし、 特に1964 年の東京オリンピックは日本人の生活が豊かにになる象徴だったかもしれない。その時代は家はもとより事業は長男が守り、その下の弟・妹は都会へ就職する(なかには東 京で一旗あげるという目的で出ていった人もいたかと思う)という形態をとりながら、地方単位での経済も安定しつつ、東京も電化製品を中心に豊かな生活を志向できた時代であったと思われる。ところが現代はどうかといえば、少子高齢化が示すとおり日本の人口は減少に向かい、東京ですら高齢化は進んでいるがそれを地方から若者を吸収することで補っている状況になっている。故に地方の人口は、特に秋田県は悲惨な状況である。小中学校時は学力優秀県と言われながら 大学等に進んでからは、地元に勤める企業がないという理由で都会へ勤務して家庭をもち 両親と離れるため(地元では仕送りをしてくれた高齢化した父母が一人暮らし又は施設入所)社会減と自然減が進む。 諸外国においては人口増加又は減少するとしても微減というのに日本だけが突出して人口減少という事実に直面している。 人口の減少というのは消費が減少することに直結するのでGDPは下がるという結果を招 く。また現代は通信技術の進歩からグローバルな時代に入っているので、当然大企業は外需を求めて収益を上げている。(最近アメリカ・中国・韓国の状況が心配されてはいるが)同じ東京都心へ人が移動するといっても昔とは根本的に状況が違っており、ただこれを仕方がないと言っていたのでは我々地方の故郷はどうなってしまうのか。確かに東京都心は街と街が線で結がれるようにインフラが整備されており地方在住の若者にとっては仕事も娯楽も憧れる地かもしれない(それだけ住環境にコストがかかることでもあるが)。比べて我が秋田県や他の地方ではインフラとして交通・経済が点としてあるため閉塞感で面白味に欠けるのかもしれない。しかし通信網の進展(PC・スマホ・クラウド等)によりどこの地においても情報を同時刻にキャッチでき取引ができる時代になり、都会にいる若者が高いスキルをもって地元で貢献できる可能性もかなりあると思われる(生活コストも都会よりは安く)。
私は10年程前から「こまちイブニングサロン」という任意団体の代表世話人をさせてもらっています。このイブニングサロンは、本部を大宮に置き大学教授を代表者として公的機関の支援を受けつつ、中小企業の「ものづくり」を主体とし東京の大企業には負けないと気概を持って新しい技術や開発したものを発表会を通じて製造業者や金融機関等に認知してもらおうという展開をしている団体で、このような団体を湯沢でも立ち上げてもらえないかと関与先である製造会社から依頼され発足したのですが、湯沢地域では製造や新技術で発表といってもあまりに数が少ないので、目的を「都会へ流出した若者を地元に戻して雇用し、自らの会社が都会と伍して戦える企業になるための勉強会や発表会をしていこう」というように変えて活動をして現在10年目という節目を迎えております。会員としては業種を問わず小売業から製造業・建設業やサービス業そして金融機関・医業と広範囲に渡っており、 自分たちが向上しなければスキルを持った若者を雇用できないし又そういう若者に希望を持たせることはできないということをモットーとしています。毎年 1 回発表会を開催しますが、大学教授をコーディネーターとして教授の紹介された県 外の中小企業 1 社、こまちイブニングと連携関係にある山形・岩手の団体から 1 社、そして地元から2社ほどから自社の発表をしてもらっています。
現在、安倍首相の提唱する「働き方改革」が進行中である。人口が減少するという前提で「生産性を上げる」その為にはAIや機械設備投資そして労働力の減少から外国人労働者の増加をあげており、又財政の問題から社会保障費に充てる(?)為の消費税増税と軽減税率適用を提示している。理屈としては理解するが、地元の中小零細事業者をみているとなかなか対応できないのではないか。首相の目線は都市中心で最低賃金を1000円以上にしようと云っていたが地方の現場を認識できていないように思える。何故ならば2019年現在東京都の最低賃金は895円/h、秋田県の同賃金は762円/hである。それに地方の企業は自己資本比率や収益力(下請けが多い)が大企業と比して著しく低い。 消費税増税にしても財政状況から 8%から 10%にするのはそれなりに理解はするが軽減税率制度やポイント還元制度については、先ず税収増加額を決めたうえで机上の計算と国民から の票取りで決定されたしか思えない。もっと単純かつわかりやすい方が国民にとって良かったのでないか(例えば10%にして非課税を限定列挙方式)、また消費税の上昇により国民の消費力も落ちることが懸念される。それであれば大企業が過去最高益を出しながらも、その利益を株主配当以外には社内留保している問題につき、法人税率を上げ(中小企業軽減税率は維持する)その税金を支払うのが嫌であれば設備投資や人件費に回すようになれば消費としては額面的には落ちないのではないだろうか? 地方にとっては誘致企業も悪くはないが、企業の理由のみで雇用人員が増加したり、削減されるのは雇用安定していないので、やはり人口の平準化ができる方策を政府に望むところである。
上記のように様々書いてきたが、要は政府の目線が都会(人口が多い)中心にある以上、地方は高年齢化して若者が少ない企業が多くなってしまう。しかし現代の通信網の状況なら、 地方で仕事をしていてTV会議もできるし都会や海外とも時間を同じくして取引や競争ができる。だからこそ地方の企業は、若者の雇用を前提として経営者がもっと努力し下請けから脱皮し独自の収益力の高い経営を確立する必要があるが、その若者の将来を考えた場合に彼等が受け取れる退職金や年金問題(本来なら20年も前に賦課方式ではなく積立方式にしておかなければならなかったが)も解決できるように外から収益をあげることができる付加価値の高い企業に移行することが絶対条件であり、そのことが賃金水準をあげることに通じるものである。これは付加価値の低い秋田県の農家にもいえることである。 国や行政に頼るもしくは文句を言うのではなく(例えば新幹線が来ない等)、立ち上がる意思を持った企業達が都会へ流出した若者やその家族を雇用することによりその周りに生活のための店舗や病院・保育・娯楽等の施設が相乗的に生まれると思うし、その伸びる街にこそ逆に国や行政が協力していく姿を創造していかなければならない。
以上
