これまで核・ミサイル開発と関連発言による北朝鮮による世界に対する挑発は、最悪の事態を避けようとする日米韓の足元を見透かすようにますますエスカレートしている。先般、9月12日朝(日本時間)に国連安全保障理事会は、石油精製品供給や原油輸出に上限を設けることを柱とする北朝鮮制裁決議を全会一致で採択しているが、効果は未知数であり今後の北朝鮮の出方が注目される。
一方、身近なところでは、北朝鮮の弾道ミサイルが北海道の上空を通過したこと(8月29日)を受けて、秋田県など東北6県と北海道の議会で作る議長らが9月11日に、自民党本部を訪れ、緊急情報を発信するJアラート=全国瞬時警報システムの改善などを求めた。北朝鮮による核・ミサイルの脅威関連で、まず地方自治体レベルで動いたことは評価したいが、国民、県民の生命財産を守るための行動からすれば小手先的だ。
北朝鮮による核・ミサイルの脅威といっても、平和に慣れている我々にとってはしょせん対岸の火事であり、都合の悪いことは考えたくもないものだ。そして、仮に脅威であっても、対応は国に任せたいと内心思っているのだ。しかしながら、秋田県においては、北朝鮮のミサイル発射は深刻な脅威として認識されつつある。北朝鮮が発射したミサイルは、昨年8月に秋田沖250キロ、本年3月、男鹿半島西方300-350キロ付近と、幾度も秋田沖にミサイルが落下しており、住民の危機意識も高くなっている。このため、本年3月、秋田県男鹿市では全国初となるミサイル発射に関する避難訓練が実施され、全国から注目を浴びた。この様子は、イギリスでも紹介されたときく。
しかし、これらJアラートでの国民通知や避難訓練を行うことにどれほどの意味があるのだろうか。都心を離れて田舎に行けば行くほど、頑丈な建物も地下もなく、多くの国民は、ただ座してミサイルが自分の元に当たらぬよう祈りを捧げることしかできない。国民に対して徒に不安感を煽る施策を行うだけでは、日本政府はその役割を十分に果たしていないといえる。
我々はここで提唱したいことがある。「予防防衛」に関する議論を始めたいことだ。国民、秋田県民の生命財産を守るため、「敵基地攻撃」を盛り込んだ「予防防衛」に関する議論である。これは、日本が長年とってきた「専守防衛」に代わるものである。「予防防衛」とは、単純明快であるが、つまり北朝鮮がミサイルを打つ前にその基地を叩いてしまう、という「敵基地先制攻撃」を組み入れた概念である。現状、北朝鮮のミサイル発射の兆候は、ある程度正確に把握することができ、それが発射される前に敵基地の攻撃能力を無効化することが出来れば、わが国に対する脅威は格段に低くなるといえよう。そして重要なことは、先制攻撃について求められるのはその姿勢にあり、多額の軍事費・防衛費は必要ないということである。加えて、極端な話ではあるが、わが国がただ先制攻撃に関する姿勢を表明するだけで、北朝鮮に対する十分なけん制となり得るのである。
この「敵基地先制攻撃」を盛り込んだ「予防防衛」に関しては、既に「予防的先制攻撃」(予防的に将来的な脅威を取り除くための先制攻撃)や「自衛的先制攻撃」(切迫した脅威に対処するための先制攻撃)といった概念によって提起されており、国際法上様々な議論を巻き起こしているが、我々は、現状の差し迫った危機を打開するため、このような議論を世界に向けて再度投げかけたい。
北朝鮮から現実的な脅威に晒されているわが国だからこそ必要な議論ではないであろうか。国内に多数の在日米軍基地と原子力発電所を置くわが国は、北朝鮮からの絶好の的であり、北朝鮮が開発する多くのミサイルが日本全土を射程にしている。北朝鮮と米国で繰り広げられているチキンレースの火花を実際に被る可能性が高いのは、まさにわが国、秋田県なのである。
大事なことは、今、目の前にある危機を正確に認識し、問題の本質を見極め、実りある議論を行うことに他ならない。「敵基地先制攻撃」を含む議論はわが国ではタブー視されているが、北朝鮮は、本年9月3日、核実験を強行し、近々、再度ICBM発射実験を強行すると言われている。ミサイル危機の最前線に立たされているわが国、秋田県の立場を認識し、国民や県民の生命財産を守るため、これまでの「専守防衛」に代わる「予防防衛」の議論をスタートさせることが重要ではないであろうか。
